コラム「ミルクはともだち」

第3回 味の違いを楽しむコツ

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牛乳をこよなく愛するグラフィックデザイナーで牛乳マニアのミルクマイスター高砂さんが、牛乳をもっと「知って・味わって・楽しむ」ためのコツを、連載でお届け。第3回は「味の違いを楽しむコツ」です。

ミルクマイスター高砂です。今回は、牛乳の「味」についてお伝えします。


一口に牛乳といっても、その味はさまざま。私はシチュエーションごとに、多様な味わい方を楽しんでいます。渇いた喉を潤したい朝や湯上がりには、キレのあるすっきりした一杯を。贅沢な気分に浸りたい午後のひとときには、まるでスイーツのような濃厚でクリーミーな牛乳を。どんな牛乳にも、その牛乳ならではのおいしさがあります。その時の気分にぴったりの一杯を選ぶことで、いつもの一杯がぐっと特別なものに変わるはずです。


私たち消費者が牛乳を購入する時、その牛乳の情報を知りたい場合は、牛乳の容器に書かれていることから読み取るしかありません。そこに書かれている情報から、その牛乳がどういった牛乳なのか、どんな思いが込められているのかを感じとることができれば、その牛乳をより深く味わうことができるはずです。

牛乳の味わいはどう違う?

牛乳は、牛から搾った生乳だけを使用した、他のものを一切足していない自然の飲み物です。「そんな牛乳に味の違いがあるの?」と思う方もきっといらっしゃるでしょう。でも、これがびっくり。どの牛乳にも、その牛乳ならではの味わいや個性があるんです。


牛乳の味の指標は、おおまかに2軸あると考えています。味覚から受け取る「甘み」と「旨み」、そして飲み心地や後味に感じる「濃厚」と「すっきり」です。牛乳によっては明確にこの4つの特徴に差が出てきます。


牛乳の個性に気がつきにくいのは、多くの方が給食でしか牛乳を飲んでいなかったり、日ごろ飲んでいても、スーパーで同じ牛乳だけを買い続けていたりするからかもしれません。牛乳の個性の違いは、違う銘柄の牛乳を飲み比べすることで、わかりやすくなります。


牛乳の味の決め手とは

では牛乳の味の違いはどうやって決まるのでしょうか。決め手は大きく分けて2つ。「牛に由来するもの」と「製造工程に由来するもの」です。

「牛」に由来する味の違い

「牛に由来する味の違い」には、「牛の種類」「牛が食べるエサ」「季節を通した牛の変化」によるものがあります。


まずは、「牛の種類」による味の違いです。


日本で飼育されている乳牛の約99%がホルスタイン牛といういわゆる白黒の牛です(白黒じゃないホルスタインもいます)。第1回のコラムでも解説した、「乳脂肪分が高い方が濃厚さやコクを感じやすいと言われている」ことを覚えていますか?ホルスタイン牛の牛乳は、平均乳脂肪分が、約3.5〜3.8%程度。それに対し、茶色の毛で目がくりっと大きいジャージー牛は、乳脂肪分が約5%程度と高く、コクがあり濃厚な味わいが特徴です。他にもブラウンスイス牛や、ガンジー牛などの牛がいますが、それぞれ乳脂肪分が異なり、味わいが違うのです。


次に、「牛が食べるエサ」の種類による味の違いです。


例えば、牧草だけを食べる牛と、牧草の他にさまざまな穀物などを食べている牛では牛乳の味わいに違いが出ます。


牧草だけを食べている牛は、どちらかといえば後味がすっきりとした味わいになり、穀物も食べている牛は、しっかりとした後味になると言われています。地域によっては、その地域の食品工場などで出た食品残渣(ざんさ)をエコフィード(大豆や野菜、果物など)として牛が食べるケースもあります。

最後に、「季節」を通した牛の変化による味の違いです。


第2回のコラムでもお伝えしましたが、牛は季節によっても生乳の成分が変わります。


牛はもともと寒い地域が原産なので、とても暑さに弱い生き物です。そのため、夏は水をとてもたくさん飲み、食欲も落ちてしまうため、生乳の乳脂肪分は低くなり、すっきりとした味わいになります。逆に、冬から春にかけては、しっかりとエサを食べ、気候もよいので、生乳の乳脂肪分が高くなり濃厚になるんです。

実はほかにも「牛」由来の味の変化はあるのですが、大きくはこの3つと覚えていればOKです!

「製造工程」に由来する味の違い

次に、味の決め手となるもうひとつが「製造工程」に由来するものです。

酪農家が搾った生乳は、そのまま店頭で販売されるわけではなく、牛乳工場に運ばれて製造工程へと進みます。生乳が加熱殺菌などの工程を経ることによって、種類別の牛乳となるわけですが、その製造工程の違いで味わいが大きく変わります。


製造工程の中で、味わいが変わるものは大きく分けて2つあります。

まずひとつ目が、「ホモジナイズ(均質化)」です。

生乳の中には、乳脂肪がとても小さな球体状の「脂肪球」と呼ばれる形で存在しています。この脂肪球をそのままの状態にすることを「ノンホモジナイズ」と呼びます。反対に、脂肪球を細かくすることを「ホモジナイズ(均質化)」と呼びます。


日本で販売されている牛乳の多くはホモジナイズされているため、あえてホモジナイズ牛乳と呼ぶことはあまりありませんが、ホモジナイズしていない牛乳を「ノンホモ牛乳」とも呼びます。ノンホモ牛乳はとても珍しいので、パッケージにノンホモと書かれていることが多いです。


ホモジナイズするかしないでは、味わいに差がでます。ノンホモは、乳脂肪分同士がくっつきやすいので、飲んだ時にもクリーミーな味わいを楽しめ、コクや旨みも感じやすくなります。ホモジナイズした牛乳は、飲み始めも飲み終わりも一定した味わいを楽しむことができます。


次に、製造工程で味が変わる2つ目のポイントは「殺菌温度と時間」です。

一般的な牛乳は120℃〜130℃で2〜3秒間殺菌する「超高温瞬間殺菌」です。味わいとしては、ミルクの香りが強くなり、しっかりとした後味が特徴と言われています。


あまり数は多くないのですが、低温で長時間殺菌する「低温保持殺菌」という工程を経た 牛乳もあります。温度は約63℃~65℃で、時間は30分間。低温で殺菌するため熱の影響が少なく、生乳本来の旨みや甘みを感じやすく、さらっとした後味が特徴です。殺菌方法は他にもいくつかあり、それぞれ味に違いがあります。


牛乳の味を決めるのは、「牛」に由来するものと、「製造工程」に由来するもの2つの要素を中心に、さまざまな要素が複雑に絡みあい、その牛乳ならではの味につながっています。色んな牛乳を飲み比べて、ぜひ自分好みの味わいを探してみてください。


そして次回は、全国にたくさんある牛乳を実際に飲みに行くのに役立つ、「地域の牛乳の楽しみ方」についてお伝えします! 第4回「地域の牛乳の楽しみ方」もお楽しみに♪



文・図/ミルクマイスター®高砂 写真/篠田英美

ミルクマイスター® 高砂

1983年、山形県寒河江市生まれ。物心ついた頃からの牛乳好きで、飲んだ牛乳は600種類以上。名古屋学芸大学デザイン学科卒業後、広告制作会社勤務を経て独立し、“牛乳をこよなく愛するグラフィックデザイナー”として活動。アニメ「ミルクのケビン」制作や「ご当地牛乳トレカ」プロジェクトの立ち上げなど、さまざまなアプローチで牛乳の魅力を発信する。

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