わたしと牛乳
牛乳は命の飲み物、音楽で魅力届けたい/バイオリニスト・岡田香織さん
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ひと口の牛乳にも、物語がある。牛乳を愛し、魅力を伝えている“ミルクインフルエンサー”たちが語る牛乳愛。1杯の牛乳の向こうに広がる、味わい・出会い・ストーリーとは──。第1回は、バイオリニストの岡田香織さんが牛乳への思いを語ってくれました。

音に寄り添う、やさしい一杯
福岡市で音楽教室「Music Atelier FUCHSIA(ミュージック アトリエ フューシャ)」を主宰し、アンサンブル活動やライブ配信など幅広いスタイルで演奏を続けるバイオリニスト・岡田香織さん。
幼い頃から音に魅せられ、音楽を人生の中心に据えてきた彼女には、もうひとつの深い情熱があります。それが「牛乳」です。 「音楽」と「酪農」をつなぎたい──そんな温かい夢を語ってくれました。

3歳でバイオリンを始めて以来、音楽と共に歩んできた岡田香織さん。バイオリンと同じように、物心ついた時にはすでに牛乳が大好きだったといいます。
「母が生協で頼んでくれる牛乳が特にお気に入りで、三食の食卓にはいつも牛乳がありました。季節や風土、牛さんの食べる飼料で味わいが変わる。その繊細さに心ひかれます。とくに冬の牛乳は、味わいが濃くてお気に入りです」
岡田さんにとって牛乳は、いつもエネルギーの源であり、心を整える存在でもありました。
「朝は冷たい牛乳の甘みで目を覚まし、練習の合間に飲むと『もう少し頑張ろう』と思える。夜は音楽を流しながらチョコレートと一緒に飲む一杯が、最高のご褒美です。私の身体の半分は牛乳でできているのでは、と思うくらい(笑)。だから感謝があるし、私にとって“相方”そのものです」
各地のミルクがくれた「旅の記憶」
岡田さんは、全国を巡る演奏活動のかたわら、各地の牛乳を飲み歩いてきました。訪れる土地ごとに、その地ならではの牛乳を探すのが楽しみのひとつ。スマートフォンの「牛乳フォルダー」には、パッケージや飲んだ場所の写真が250枚以上も並びます。
「どこで何を飲んだかを思い出せるようにしています。おすすめを聞かれた時にすぐ答えられるように。私の小さな“ミルク地図”です」

中でも印象に残っているのは、三重県で出会った牛乳だと言います。
「販売店で『全種類ください』と買いそろえたら、母に『そんなに飲めるの?』と驚かれました(笑)。でもどれも本当においしくて、すぐに飲み切ってしまいました」
旅先で牛乳を味わうことは、岡田さんにとって“土地の記憶を飲む”体験そのもの。
「その土地の匂いや生産者さんの想いが、牛乳と結びついて記憶に残っています。パッケージを見るだけで、『あの時、あの場所で飲んだな』と旅の記憶が蘇ります」
牛舎に響いた音色「愛の挨拶」
そんな岡田さんが最近挑戦したのが、牛舎でのバイオリン演奏です。
岡田さんのライブ配信を聞いているリスナーの1人が酪農家だったことから、夢だった牛舎の訪問が叶いました。
「最後に牛さんたちに音楽を聴いてもらおうということになり、牛舎で演奏しました。牛さんたちはじっとこちらを見つめながら聴いてくれて……“届いている”って感じた瞬間、とてもうれしかったです」
その日演奏したのは、エルガーの《愛の挨拶》とモンティの《チャルダッシュ》。牛たちは最後までじっと耳を傾けていたといいます。
「生産者の方も『聴いているね』って驚かれて、笑顔でビデオを撮ってくださって。本当に素敵な経験でした」

この出来事をきっかけに、岡田さんの中に新たな夢が生まれました。
「私が住む福岡の生産者さんと協力して、バイオリン演奏を聞いた牛さんのミルクの風味にどんな変化が出るのか、ぜひ試してみたいと思っています。すでにクラシック音楽を聴いて育てられた牛から搾られた牛乳などが商品化されていますが、私の演奏を聞いた牛さんのミルクがもしどなたかに届く日がきたら……私にとっては夢のような話です」
“命の飲み物”を、未来へつなぐ
音楽の舞台から日々の暮らしまで、牛乳はいつも岡田さんのそばにあります。
「牛乳って、命の営みがあってこそ生まれる特別な“命の飲み物”だと思います。牛さんが草を食べ、酪農家さんが大切に育ててくれて、命を宿すからこそ、ようやく私たちの手元に届く。そんな背景も含めて、私は牛乳が好きなのだと思います」

今後は音楽を通じて牛乳の魅力を伝えていきたいと岡田さんは考えています。
「コロナ禍で生産者の方々の苦労を耳にしてから、何か私にできることはないかとずっと考えてきました。今の夢は牧場でコンサートを開くこと。音楽を通じて、作り手と消費者をつなぐ架け橋になれたらうれしいです」
日常のひとときにも、音を奏でる時間にも──岡田さんの人生を優しく支える一杯の牛乳。
命の恵みを感じながら、今日も岡田さんは音を紡ぎます。
写真提供:岡田香織さん
文/谷岡碧
岡田香織(おかだ・かおり)




